【暗い情熱 タンゴ】

ワルツを清楚な白鳥に例えるなら、タンゴは黒い情熱の炎を放つ黒鳥の姿。

タンゴのイメージは強烈だ。ワルツの幸福感や軽やかさからはほど遠く、激しいと同時に、娼婦の突き放したような冷ややかな視線も感じられる。モダン種目の中でも最もドラマチックな踊りである。

タンゴの動きはほかのモダン種目と一線を画す。ワルツおよびスローフォックス、クイックステップの動きは流麗である。男は男、女は女の空間を守りつつ、ぴったりと対称的に動く。それに比べてタンゴでは、男性が突如、それもたびたび、女性の空間に侵入してゆく。動きの流れに断絶が見られる。時間が宙吊りになる瞬間が随所にある。一種の堅さというか切れ味のよさがタンゴの魅力である。

躍りませんか?
  -社交ダンスの世界
浅野素女著より

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