【生と死のはざま  パソドブレ】

開放的で明るいイメージが支配的なラテンダンスの中で、パソドブレだけは異質である。音楽が鳴り響いた途端、勇壮かつ悲壮な雰囲気が立ち込める。
パソドブレという踊りには、闘牛とフラメンコという二つの世界がぎゅっと凝縮されているためだろう。

男性は牛に挑み、倒すことでその力を奪い取り、我がものとすることができる。それは腕力だけを意味するのではなく、性的な力をも意味するものだろう。

女性はカポーテとなる。もちろん牛を挑発するあのカポーテであるが、場合によっては、入場する闘牛士の肩を覆う光輝くばかりの刺繍がちりばめられたカポーテでもあるだろう。カポーテは挑発であると同時に、愛であり、励ましであり、温もりであり、いのちそのものである。時に闘う者を勇気づけ、助け、時に挑発し、女性は生と死を隔てる一枚の布と化して壮麗に舞う。

躍りませんか?
  -社交ダンスの世界
浅野素女著より

タイトルとURLをコピーしました